「絶対に俺から離れるな! お前は、力が無いとゼロは去ると思っているだろうが、甘い! 成長を止めてしまった時点でゼロに抹殺される。お前は爺さんと婆さんを置いて死ねるのか?」

祖父母を置いて……それはできない。息子夫婦を失い、孫の私まで失ったら……。

「じゃあ、全開眼できたらゼロは私を諦めるというのですか?」
「それは無い。奴はお前の力を取り込むつもりだろう」
「それって……どっちみち殺されるということじゃないですか!」

我慢しようにも涙が溢れてくる。

「だからだ! 悪霊に取り憑かれた霊能力者が生き延びるには、そいつ以上の力が必要なんだ」
「ゼロ以上の力……そんなの無理です!」
「無理じゃない。俺がいる。ゼロと対面したことはないが、俺は奴以上だ!」

「でも……」因幡さんが緑茶を淹れて戻ってきた。

「ミライちゃんの話によると、前世ではやられちゃったんでしょう?」

「はい、どうぞ」と言って急須を湯呑みを天地さんの前に置く。

「ふん、そんなこと知るか! 俺は強いんだ!」
「否定しないけど……(おご)りは命取りよ」
「とにかくだ。ミライ、塔子さんを殺すな!」
「はい?」
「だから、せっかく塔子さんに貰ったんだから角膜を無駄にするなと言ってるんだ」

ああ……と天地さんの言葉の意味を理解する。彼は塔子さんのためにここまで私を思ってくれるんだと。

ふと、そんなに思われていた塔子さんが羨ましくなった。私にも、そんな風に思い思われる人ができるのだろうか? そう思ったら無性に彼女に会いたくなった。

――どんな女性(ひと)だったのだろう? 天地さんのみならず、ゼロにまであんなに思われて……。