「だったら、これ以上の力は要りません」

力を付けなければゼロから解放されるかもしれない。そう思ったのだが……。

「究極のアホーだな」

そう言うと天地さんは指をしゃぶりながら、「口の中が甘い、煎餅はないのか?」と訊ねる。

「蒼穹、あんたって……」

私のブスッとした顔を見たからだろう、そう言って因幡さんはフルフルと頭を振りながらも、キッチンからお煎餅の入った缶を持ってきた。

「おっ、徳用南部割れ煎餅じゃないか。早く出せよ」

早速に蓋を取り、一片を取り出してバリバリと音を立てながら食べ始めた。そして、「渋―い緑茶もよろしく」とさらに催促する。

「蒼穹! 何を焦らしてるのよ、どうしてミライちゃんが究極のアホーなのか言ってあげなさい」

「全くもう」と怒りつつも、因幡さんは優しい。また席を立ちキッチンに向かった。

「分からないのか?」
「分かりません」
「だからアホーだと言うんだ。おっ、ゴマ入り最高!」

私を苛めるのがそんなに楽しいのか、と怒鳴りそうになるが、グッと我慢する。

「教えて下さい。力を得ないとアホーなんですよね? どうしてですか?」
「教えたら、また借金が増えるな」

片方の口角を上げて天地さんが実に忌々しく笑う。

「要するに、何を言おうがお前は俺から離れられないということだ。否が応でも力は付いていく。お前の意思は無きに等しい」

ガハハと声高々に笑い、「だからな」とそれをスッと引っ込めた。