すると、「こいつ、というよりもこいつの〝目〟かな?」と天地さんが私を見る。その視線がいつになく優しく感じるのは、気のせいだろうか?

「それって、塔子さんの角膜が狙いだとでも言うの?」

いや、気のせいじゃないみたいだ。塔子さん絡みだからだろう。何となく面白くない。

だから、因幡さんの疑問に対して「えーっ、嫌ですよ!」と、少々大袈裟気味のリアクションを返した。

「角膜を盗られちゃったら、また暗闇の世界に戻っちゃいます。そんなの勘弁です」
「いや、それはないだろう」

口をモグモグさせながら天地さんが否定する。

「ゼロはお前が全開眼するのを待っているんだろう」
「あっ……それって超霊波が何チャラカンチャラですよね? 実は、もうお分かりだと思いますが、私、いつの間にか生き霊も悪霊も視えるようになりました」

本当は怖いから全然良くないのだが、天地さんの手前、グッと胸を反る。だが、天地さんの反応は「ふーん」だけだった。

「――声もちゃんと聞こえます!」

勝負をしているわけではないが、何となく負けた感がして言い返すと、「それは俺が側にいるからだ」と当然のように言った。

「どういう意味でしょう?」
「金之井の生き霊や鬼面は、俺がやった腕時計を持っていたから視えたんだ」

天地さんから発信された超霊波を腕時計が受信して、それを私が感知しただけだと言う。

「俺の力が有ってこそだ。よって、お前はまだ全開眼とは言えない。但し、俺の影響で少しずつ力は強まっているがな」

以前にも増して、『俺が俺が』の俺様炸裂だ。