「貴方たちは出会うべくして出会う運命だったのよ! ロマンチックだわぁ」

因幡さんが祈りのポーズで少女漫画の主人公のように瞳をキラキラさせている横で、天地さんは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

おそらく、弱っていたあの惨めな姿を見られたことが恥ずかしいのだろう。しかし、私は見ていない。盗み聞きしただけだ。

「ゼロは『不思議だ』と言ったようだけど、青柳が塔子さんの角膜をミライちゃんに移植したのも運命だったのよ」
「因幡の白兎、本当に呆れるほど医者とは思えない台詞だな」
「あら、ロマンチストと言って」

プクッと頬を膨らませるマッチョなイケメンに苦笑いが浮かぶ。

「運命はともかくとして、青柳が塔子さんの角膜をミライに移植したのは適合したからだ。違うか?」
「ええ、そうよ。だから、運命だって言ってるの」
「運命は横に置いておけ!」

天地さんが苛立たしげに因幡さんを睨む。

「たまたま順番がミライで、たまたま適合した、と考えるのが一番自然だろうが、俺はたまたまとか偶然とかいう言葉が嫌いだ。そこにはきっと何か訳がある」

「だからぁ」と言いかけた因幡さんを天地さんは刃の視線で一刀する。

「――ようやく、少しずつだが欠けていたピースが揃い始めた」

過去に思い馳せるように、遠くを見つめながら天地さんはもう一個パウンドケーキを頬張り始めた。

「私のジグソーパズルはまだまだぐちゃぐちゃのまま。ゼロの狙いは……やっぱりミライちゃんなのかしら?」

因幡さんは天地さんを憎らしげに見つめながら、「一人悦に入っていないで説明してよ」と要求する。