「ああ、奇想天外摩訶不思議な話だが、ミライが夢物語を言っていないということは分かる。全て本当のことだろう」

信じてくれたんだ。そう思ったら嬉しくなった。

「どうりで、お前の目を見たとき、見覚えが有ると思ったんだ。塔子さんの角膜だったんだな……」

時々、ジッと見つめていたのはそのせいか、と思い返す。

「でも……黒子は……」と何か言いかけた天地さんだが、いきなり「あっ!」と声を上げた。

「何よ? 大声出して」

因幡さんが胸を押さえながら天地さんを睨む。私もビックリした。

「お前……あぁぁぁ! あの時の!」

叫びながら指を差される。

「何? 何なのよ!」
「因幡、こいつ、ほら、あいつだ!」
「あいつだ、だけじゃ分からないわ。誰よ?」
「ほら、盗み聞きしてたっていうガキ」
「えっ? 塔子さんが亡くなった日の? 病院で?」
「あぁぁぁぁ!」

因幡さんと私の声がハモる。

「ロミオ! おぉ、ロミオ! 天地さんがロミオだったの?」

「ロミオ?」因幡さんがキョトンとしながら、「ジュリエット?」と何故か私を指す。

「どうしてここでシェークスピアが出てくるんだ?」

私たちの様子を見ていた天地さんが、呆れたように口をへの字にする。

「あっ、違うんです」そう言ってあの日のことを話すと、因幡さんがしみじみとした様子で「運命ね」と言った。