「――ということは、虚偽の静寂教団の教祖と言われている偽装零もコントロールされていた、ということよね?」

まず口火を切ったのは因幡さんだった。落ち着こうとしているのだろうが、声の調子で興奮しているのが丸わかりだ。

「それも鬼面に? ゼロは鬼面ということ? 鬼面って鬼の面のことよね? あら、やだ、そんなのが憑いてるの? 怖いじゃない」

早口で言って、冷めたお茶を一気飲みする。

「ねぇ、蒼穹、貴方の意見は? どう思う?」

空になったカップを口から離すとフーッと息を吐き出し、因幡さんは天地さんに目を向けた。

しかし、彼はずっと黙ったままだ。

ショックを受けたのだろうか? だから内緒にしたかったのに……と口を尖らせていると、グフッと奇妙な声が聞こえ、続けて耳をつんざくような高笑いがした。

「――蒼穹?」「天地さん?」

因幡さんと顔を見合わす。

「貴方……気でも違ったの? しっかりして!」
「俺が、俺が、神だってよ」

お腹を抱えて笑い始めた天地さんを見つめていると、彼の瞳が潤んでいるように見えた。

笑いすぎのせい――ではないと思う。

「おい、本当にそれで全部なんだろうな?」

笑いを収めた天地さんが確認するように訊く。

「はい。ゼロの話はそれだけです」
「そっか……」思案顔の天地さんに因幡さんが訊ねる。
「蒼穹、大丈夫?」