まんまと嵌められたと思った。

「ちょっと蒼穹! そんな風に脅迫紛(きょうはくまが)いに迫ったら、怖がって何も言えないじゃない」

そうだそうだ、というようにコクコク頷く。

「俺には隠し事をするなとあれほど言っておいて……甘い顔などできるか!」

確かにそうだが……。それもこれも、天地さんの気持ちを考えて……とぐだぐだ思っていると、突然、天地さんの両手が伸びてきて、両頬を(つね)られる。

「おらおら吐け!」

貴方は〝や〟の付く危ない人ですか!

「止めてくらはい」
「日本人なら日本語はちゃんと発音しろ!」

こんな状態で正しい日本語なんて言えない。涙目で因幡さんを見る。

「もう! 蒼穹、お子ちゃまみたいなこと止めなさい」

助け船を出してくれたが、天地さんの手はそのままだ。

「いひまふ、いひまふから、はなひて」

「本当だな」と言って、ようやく天地さんの手が頬から離れる。

「それで、何を隠しているんだ?」

両頬をナデナデしていると、天地さんが急かすように問う。

「――何を聞いても暴れないで下さいね。それから、夢だろう、と疑わないで下さいよ」

「大丈夫。暴れたら私がお仕置きするから。任せておいて」と、因幡さんがドンと胸を叩く。

「おい!」と天地さんが睨んでいるが、私は「よろしくお願いします」とそれを無視して話し出した。


 *


話し終えるとシェルター内に沈黙が訪れた。秒針を刻むアンティークの鳩時計の音が妙に耳につく。