「そんな……」

浅井青年の件で、『罪を償わずして自殺するとは最低な奴だ』そう吐き捨てた祖父の悔しそうな顔が蘇る。

私も、他人事ながら、巻き添えを食った浅井青年や母親の気持ちを考えると心が痛んだ。

だから尚更だ。自分の家族を殺めたのが事故ではなく故意だった? 別人だった? その上、のうのうと生きていた?

「――大物狙い、ということですか?」

事実を知った今、父母が二度殺されたように思え、憤りとやるせなさで身体が震える。

「ミライちゃん……」
「だから、小物が何をやっても許されるということですか?」

怒りでこの身を焼き尽くせそうだ。

「そんな理不尽な人たちに、これ以上協力できません!」
「お前、本当にアホーだな」

激昂(げきこう)した私を小馬鹿にしたように嗤い、天地さんは腕を組み偉そうに()()った。

「お前、自分の言った言葉を忘れたのか? お前はついさっき、運転手はコントロールされていた、と言ったよな?」

射貫(いぬ)くような鋭い眼が私を見る。

「た……確かに言いました。でも、それとこれとは……」
「違わない。火事を起こしたのも、塔子さんを轢き殺したのも、コントロールされてやったことだ」

そう否定しながらも、天地さんの表情は苦痛に満ちていた。

当然だ。いくらゼロがコントロールしていたとしても――あっ……じゃあ、天地さんはゼロが塔子さんを殺めたと知っていたということ?

「何を驚いている?」

したり顔でニヤリと嗤う天地さん。極悪非道を絵に描いたような顔だ。

「今の様子で確信した。言え! お前は俺にまだ言っていないことがあるだろう?」