因幡さんに促されカップを手にするが、ガタガタと震えてお茶が零れそうになる。それを天地さんが止める。
「ちゃんと持て!」手前から伸びてきた彼の手が私の手に重なったのだ。
冷たい……でも、温かな手だと思った。
彼はそのまま私の口元にカップを運び、「飲め」と言った。言われたとおり、一口飲む。そこで手が離された。
「ミライちゃんが驚くのも無理ないわ。公には被疑者死亡と発表されたもの」
「――生きていた……それをお二人――ううん、貴方たちは知っていた?」
「ああ、知っていた」
感情を持たない冷たい声が答える。そして――。
「あの男は――塔子さんを轢き殺した男でもある」
そう付け加えた。
ハッと天地さんを見る。〝塔子さん〟とは〝トーコさん〟のことだとすぐに分かったからだ。
「ど……どうして二つの事件の犯人が同一人物だと」
「分かったのか、よね?」と因幡さんが小さく頷く。
「まず、火災を起こしたとされる遺体の件、これはDNAからすぐに別人だと分かったわ。次に轢き逃げの件だけど、防犯カメラが犯人の顔を捉えていたの。で、それが火災当時から行方不明だった部屋の持ち主と一致したの」
「でも……」どの記事にもそんなことは書かれていなかった。
「極秘扱いだったから公表できなかったの」
私の言いたいことが分かったのだろう。因幡さんが付け加えた。
「極秘というのは、これら全ての事件にゼロが関与していると睨んでいたの」
「あの火事も……ゼロが起こしたというんですか?」
「ええ、だから公安も我々の部署も奴を泳がす意味で敢えてデマの情報を流したの」
だから、真実を知らなくて当然だということだろう。
「ちゃんと持て!」手前から伸びてきた彼の手が私の手に重なったのだ。
冷たい……でも、温かな手だと思った。
彼はそのまま私の口元にカップを運び、「飲め」と言った。言われたとおり、一口飲む。そこで手が離された。
「ミライちゃんが驚くのも無理ないわ。公には被疑者死亡と発表されたもの」
「――生きていた……それをお二人――ううん、貴方たちは知っていた?」
「ああ、知っていた」
感情を持たない冷たい声が答える。そして――。
「あの男は――塔子さんを轢き殺した男でもある」
そう付け加えた。
ハッと天地さんを見る。〝塔子さん〟とは〝トーコさん〟のことだとすぐに分かったからだ。
「ど……どうして二つの事件の犯人が同一人物だと」
「分かったのか、よね?」と因幡さんが小さく頷く。
「まず、火災を起こしたとされる遺体の件、これはDNAからすぐに別人だと分かったわ。次に轢き逃げの件だけど、防犯カメラが犯人の顔を捉えていたの。で、それが火災当時から行方不明だった部屋の持ち主と一致したの」
「でも……」どの記事にもそんなことは書かれていなかった。
「極秘扱いだったから公表できなかったの」
私の言いたいことが分かったのだろう。因幡さんが付け加えた。
「極秘というのは、これら全ての事件にゼロが関与していると睨んでいたの」
「あの火事も……ゼロが起こしたというんですか?」
「ええ、だから公安も我々の部署も奴を泳がす意味で敢えてデマの情報を流したの」
だから、真実を知らなくて当然だということだろう。