「テレビドラマなんかで検死官とかが、科学の力で立証します、とかやってるのに、お前って超非科学的な事ばかり口にするじゃないか、そういうとこ」
「あらっ、あたしが堅物な検視官になっちゃったら、困るのは今の部署でしょう?」

フンと鼻を鳴らしながらも、因幡さんはティーポットのお茶を天地さんのカップに注ぐ。

「夢……? 信じられない」

「同じ台詞を公安も言っていた」と言いながら、天地さんは注がれたばかりのお茶にどぼどぼと蜂蜜とミルクを注ぎ入れる。

「故に、金之井のお嬢事件はバスの運転手が起こしたものとして捜査が開始された」

公安曰く。現場からただ一人消えたのが何よりの証拠だということらしい。

「運転手って……顔右半分に火傷痕のある?」
「ああ、それは他の証言者とも一致している」
「あの人が犯人ということですか?」

天地さんと因幡さんが同時に頷いた。
「違います」間髪入れずそれを否定する。

「彼もコントロールされていた一人だと思います」

「しかしなぁ」と言って天地さんはお代わりのお茶で口を潤し、話を続ける。

「運転手には余罪が有ったんだよ」

「そうなの」と同意しながらも因幡さんの顔が曇る。

「その余罪って?」
「お前、火事に巻き込まれたって言ったよな?」

突然何の話だ、と天地さんに目を向ける。

「そうですけど……それが何か?」
「あの運転手は、その火事を起こした張本人だった」
「はい? どういうことですか? あの人は死んだはずでは?」
「ミライちゃん、落ち着いて! ほら、お茶を飲んで」