「さっきからお前は! 痛いだろう、何すんだ?」
「あら? 痛いという感情は有るのね?」

ツンとそっぽを向き、「デリカシーのない発言ばかりだから、サイボーグかと思って確かめてみました」と、シレッと答える。これにはちょっと笑った。笑ったら少し気持ちが(なご)んだ。

「あのなぁ、俺は心優しき紳士だ。別れ際、こいつに注意を(うなが)すことも忘れなかったぞ」

『絶対に無茶をするなよ』
『何かあったら、とにかく逃げろ! 闘おうなんて思うな!』

どうやら、それらがその注意だったようだ。しかし、あんな中途半端な言葉で『悟れ』とは無茶な人だ。

「それに、腕時計も渡したよな」

あっ、と思い出す。

「腕時計!」

私の視界がホワイトアウトしたのは――それが『動き出した』とゼロが言った後だった。

「その後どうなったんですか?」

天地さんから事情を訊かれた私は、金之井嬢の生き霊と出会ったところから詳細に事の顛末(てんまつ)を語った。その時、金之井嬢と乗客六人が救出されたことは聞いた。

「それが……あくまでもあの件は〝金之井涼子略取・誘拐捜査〟として動いたことになっているの。だから、教団員でもないミライちゃんは、表向きあそこにいなかったことになっているの」

「ごめんね」と因幡さんが謝る。

「それは何に対しての謝罪ですか?」