「お……お二方とも、どうしたんですか?」

こんなことをされたら天変地異が起こりそうで怖い。

殊勝(しゅしょう)すぎます。ガラじゃありません。頭を上げて下さい」
「だよな」

早々に上げる天地さんを因幡さんはメッと睨み、彼の頭をコツンと小突(こづ)くと、この場の雛席(ひなせき)と云われる椅子に腰を下ろした。

「全くもう! 蒼穹ったら反省が足りないわよ」
「痛ぇ! 馬鹿力で叩くな」
「非力なあたしの拳固(げんこ)が痛い? そんなわけないじゃない」
「非力だぁ! どの口が言う?」

二人のたわいない口喧嘩を眺めながら、平和だなぁ、と感慨深く思う。

「あれからもう四日も経つんですね」

私は天地さんと因幡さんが現場に到着した時点で意識を取り戻していた。

「おい、因幡の白兎。ミライは本当に大丈夫なんだろうな?」

祖父母に心配をかけたくなくて、『帰る』と言う私を天地さんは強引に止め、因幡さんのところに一泊だけ入院させた。

「ええ、至って健康。精密検査の結果も異常なしだったわ」

どんな手を使ったかは知らないが、翌日帰宅した私に、祖父母は『お疲れ様』と労らいの言葉をくれた。

この時ばかりは、心底〝嘘も方便〟は必要なものだと思った。と同時に、天地さんが属する部署の工作に感服した。

「因幡さんの言うとおりです。私は何処も何ともありません」

ほらこのとおり、と力こぶを作る。