「嘘っ、どうしてまだ二時を少し回ったところなの?」
〈次に会うときは……〉

鬼面が何か言ったような気がした。だが、そこで視界がホワイトアウトした。


 *


多種多様の音が混ざり合い、(うるさ)いほど辺りが騒がしい。バラバラと激しく騒音を()き散らしているのは雨の音? いや、違う。ヘリコプターの音だ。何機飛んでいるのだろう?

「こちらGワン応答せよ。見つけました! ええ、あのバスです」

耳の側で男性が叫んでいる。

「外場ミライさんと金之井涼子さんとみられる女性二名を発見しました。他には乗客と思われる男性二名と女性四名もです。運転手らしき姿はありません」

また別の誰かが叫ぶ。

「生存は確認しました。しかし、意識がありません。至急、救急車を寄越して下さい!」


 *


「すまなかった!」

天地さんが勢い良く頭を下げた。

「えっ?」見てはいけないものを見たような気がして、思わず目を擦る。
「あらあら、ダメよ」

私と天地さんの前に甘い香りのするお茶を置きながら、因幡さんが「擦っちゃダメ」と注意する。

デジャブ? こんな会話を最近交わした記憶がある。でも、いろいろなことが有りすぎて、はるか昔のように感じるのは……気のせいだろうか?

「あたしからもお詫びするわ」

因幡さんはカップを一つトレーに載せたままテーブルに置くと、「ミライちゃんを(おとり)みたいに使って、本当にごめんなさい」と言って深く(こうべ)()れた。