膝の上の少年を見るといつの間にか眠っていた。よくこんな中で眠れるものだと感心する――と唐突に音楽が止んだ。

〈到着したわ〉

金之井嬢の言葉と共に木々のトンネルを抜け出た。

「えっ……洞窟?」

マイクロバスが停まったのは切り立った岩壁の前だった。そこに歪な形の大きな穴が空いていた。

「金之井さん、ここが本部なの?」

予想外の場所に驚き訊ねるが……返事が無い。

「金之井さん?」

辺りを見回し、彼女が消えたことを悟る。

〈お姉ちゃん……〉

目を覚ました少年が、私を見上げてツッと可愛い小さな手で窓の外を指差した。その先に、六人の男女が穴に向かって行く姿があった。

「そうね、ママを探すんだった。私たちも行かなきゃ」

慌てて六人の後を追いかける。

近寄って見ると、穴の入り口はトンネルほど大きくなかったが、身を縮めるほどでもなかった。

中は薄暗かったが外光のお陰で入り口付近の様子はよく分かった。天井も高く広い。以前、祖父と祖母と行った、滋賀県の〝河内(かわち)風穴(ふうけつ)〟に似ていると思った。

「おっと……」

ゴツゴツとした岩に足を取られそうになり、ここを進むのかと少々ゲンナリする。

しかし、六人の向かった方の通路は荒いながらも舗装がされていた。

「これって人感センサー付きのライト?」

おまけに、そんな近代的なものまで取り付けてあり、正直ホッとした。

観光地化された鍾乳洞のように、装飾や仕掛けは無いが……気も遠くなるほど膨大な年月をかけ(つちか)われた様は神秘的で、それらに負けず劣らず太古のロマンを感じさせてくれた。