〈彼らの中に入り込んでいるのは霊ではなく、教祖様の思念〉

それによって身も心も浄化されるのだと言う。

〈その思念を、踊念仏のように歌い踊ることで、よりパワーアップさせているの〉

でも……と金之井嬢が私を見る。

〈貴女は教祖様の思念をキャッチしない人みたいね〉

告げられる話は驚異(きょうい)的なものばかりだが、この言葉が私に一番ダメージを与えた。

「――キャッチできないと……何かされるの?」

声が震える。

〈どうなのかしら? 今まで教祖様の美しい思念に触れられない人っていなかったから……貴女って可哀想な人ね〉

だが、やはり陽炎の金之井嬢は優しかった。危害を加えることも無く、逆に同情されてしまった。

ここは一つ、キャッチするフリでもしておいた方がいいだろうか?

そう思案しながらも、彼らの様子を見ると、素面(しらふ)であんな真似はできそうもないと思い直す。

そんな私の思いをよそに、車は相変わらず木々のトンネルの中を走り続けていた。

小山の中腹に向かっているのは確かだと思うが、と腕の時計を見る。天地さんから貰った物だ。

『スマートフォンに頼るのもいいが、ときに超霊波は精密機器に支障をきたすことがある。これを着けておけ』

あの日、別れ際にそう言って、投げて寄越した手巻き式のアナログな腕時計だ。

あの時は、〝ど〟が付くケチな人なのに珍しいこともあるものだ、と気味悪く思ったが……こういう状況にあると、ただの時計だが天地さんの分身のようで心強く感じる。

時計の針は二時を少し回ったところを指していた。今週は試験中ということもあり学校は午前までだった――とすると、ゲートを入りかれこれ二十分弱といったところだろう。