金之井嬢が向かった先は、校舎裏にある立ち入り禁止となっている林だった。すぐ近くに崖が有り、地盤の不安定さから落石が良くあるからだそうだ。

まさか、〝森の中の幽霊堀〟同様、それもフェイクだったなんてオチじゃないでしょうね?

もしそうなら――だから魂を穢さず生きることなんてできないのだ、とゲンナリする。

〈あの人に私からの紹介だと言って〉

金之井嬢の指差す方に小型のマイクロバスがあり、それにもたれ掛かる人の姿があった。

「あの人……」

歩みを進めるうちにその人が男性で、つばのある帽子を深く被っているのは、赤黒くただれた顔や首を隠すためだと気付いた。

火傷の痕だろうか? まさか、浅井青年みたいに硫酸で、ってことはないわよね。

霊たちの悲惨な状態を視ていなかったら、そのケロイド状の皮膚を見ただけで(ひる)み、立ち止まってしまっていたかもしれない。右半分だけだが、それほど酷い様相をしていた。

しかし、慣れていると言っても、若い女性が平気な顔で近付けば変に思われる。

だから、少し(うつむ)きながら怖々という風に、「金之井さんの紹介で……」と言うと、男性はチラリと私を見遣(みや)り、無言で――おそらく声帯も潰れているのだろう。『乗れ』というように(あご)をしゃくった。

車内には男性二名と女性四名がいたが、六人とも見知らぬ人たちだった。
何を見つめているのだろう? どの人も無言で前方をジッと凝視している。
そんな彼らを一望できるように、私は一番後ろの席に腰を下ろした。