「なるほど」と思わず(うな)ってしまった。
彼女は壱吾(いちご)君と同じ生き霊なのかもしれない。そう思うと辻褄(つじつま)が合う。

「金之井さん、貴女は今どこにいるの?」

シオが怪訝(けげん)な顔をする。でも、賢い彼のことだ。すぐに事情を察するだろう。

〈とても幸せな場所〉

いつもの意地悪な金之井嬢ではない。天地さんの言うとおり、悪霊が憑いていても根底で眠る魂は美しいままなのだろう。

でも、どうして壱吾君のようにはっきりとした姿が視えないのだろう?
二人の違いを考え、金之井嬢には霊感が無いことに気付く。
「だからか」と独り言ちる。

〈あの方のお側にいられて、私、嬉しいの……幸せなの……〉

彼女から発せられる超霊波から、金之井嬢が恋をしていると感じた。

「あの方とは、もしかしたら虚偽の静寂教団の教祖様のこと?」
〈そう、とても素敵な方なの。だから、皆、好きになるの。その子の母親もね〉

そこでハッとする。
霊感も無くチャンネルも違う彼女が、どうして少年を視ることができるのだろう……と。

〈ミライ――〉

心配そうにシオが私を見る。だが、金之井嬢はシオの存在には気付いていない。
どうして? 何が違うというのだろう?

「この子をお母さんのところに連れて行ってあげたいの」
〈いいわよ〉
〈ミライ!〉

金之井嬢の返事に(かぶ)せてシオががなる。それをアイコンタクトで(おさ)めて、少年に向き合う。