認めたくはないが、はい、と返事をすると、「守銭奴だってことも?」と付け足すように問うた。

「それのせいでこんな状態になっているんです」とぼやいた途端、ハッと思い出す。

「ところで、今、何時ですか?」

祖母とは病院で別れ、何も言わず現在に至る。

「午後七時を少し回ったところ。でも、心配しないで。お家にはちゃんと連絡しておいたから。九時には送っていくわ、蒼穹がね。そのぐらいに戻って来るでしょうから」

それならいいがと思った途端、「さぁ、飲んで飲んで!」とお茶を勧められる。


その後、何杯あのお茶を飲んだだろう? 何回トイレに通っただろう?
あのシェルターにはそんな恥ずかしい思い出しか残っていない。


 *


「すっかり毒気は抜けたようだな」

天地さんはピッタリ八時半に戻ってきた。
「お陰様で」と返事をするが、この話は避けたかった。

「お前、青柳医師とはどうやって知り合った?」

だが、私が避けるより先に天地さんが話を変えた。

「どうって、祖父の医者時代の知人だそうです」

そう返事をして運転席に目を遣ると、外灯に照らされ深い陰影を作るシリアスな横顔があった。

「もう少し詳しく話してくれ」

その顔があまりにも険しかったので素直に応じた。

「――四年前――角膜移植手術――二年ほどの付き合いなのに突然見舞いに訪れた。なるほどな」