ガツンと頭を殴られたような衝撃的な言葉だった。

「自分も含めて、あたしはあたしの周りにいる人たちが愛おしくて堪らないの。喩えそれがどんな変人でも悪人でもね」

祖父も言っていた。医者はどんな人間に対しても平等であらなければならないと。そこに〝愛〟がなければできないことだ。

霊が視えることもだが、私は自分をずっと欠陥を持つ不完全な人間だと思ってきた。それがネックとなり人を遠ざけてきたのだが――。

「私、自分が物凄く小さな人間に思えます」
「あら、そう? あたしにはとても大きな存在よ。蒼穹にとってもね」
「どういう意味でしょう?」
「実はね、あたし、彼の主治医でもあるの」

天地さんが謎の部署に拘わり始めたのは数年ほど前らしい。

「その少し前、彼はとある理由で身も心もボロボロになっちゃったの。で、彼の従兄弟が彼をここに連れてきたのが腐れ縁の始まり」

あの図太そうな天地さんが……? 信じられない。

「貴女も見たでしょう? 彼の十円ハゲ。あれはその時にできたものなの。未だに残っているということは、その時の傷がまだ癒えていないということなの」

確かに見た。二個も。

「貴女とバディを組むようになって、彼、随分明るくなったのよねぇ」
「それは、アホーと馬鹿にする相手ができたからからだと思います」
「あら? 蒼穹にはどの人間も馬鹿に見えるみたいよ。知っているでしょう? 彼の華麗なる経歴」