疑問を現実にするような言葉が告げられ、これでも乙女の端くれである私は恥ずかしさのあまり赤面する。

そんな私をスルーしてくれる因幡さんは、やはり天地さんとは大違いだ。彼ならここで面白おかしく大いにツッコミを入れただろう。

「さっきの話だけど――」

因幡さんは一口お茶を飲んだ後、話し出した。

「特別室じゃなくて救急車の中からよ」

思いも掛けない言葉に目が点になる。

「貴女は世継病院が所有するドクターカーに乗せられていたの。向かっていたのは樹海方面。おそらく虚偽の静寂教団の本部でしょうね」

因幡さん曰く、かなり危険な状況にあったということだ。

「救急車が堀を渡って教団の中に入ってしまっていたら、こんなに早く奪還できなかったと思うわ」

シオたちが天地さんに知らせてくれたから……感謝だ。

「因幡さんもご存じなんですよね? 私が霊を視ることができること」
「当然。資料にしっかり書いてあったもの」

いったい何処までプライバシーが暴露されているのだろう……?

「私のこと気持ち悪くないですか?」
「どうして?」
「だって、普通の人と違うから……」

因幡さんが首を傾げる。

「あたしには〝普通の人〟がどんな人か分からないわ。何を以て普通なの? 皆違って皆いい、じゃないの? 普通の人間というのが、無個性で一律な人間を指すのだとしたら、コピー人間みたいで、むしろそっちの方が気持ち悪いわ」