「詳しくって言っても、十六歳で、医学博士で、生誕はヨーロッパだけど現在はアメリカ在住で、ケンブリッジ大学に籍を置いている、ってことぐらい?」
「あら? いっぱい知っているじゃない」

いい子いい子、と因幡さんが私の頭を撫でる。天地さんとは大違いだ。なんていい人なんだ。

「いやだぁ、クールな子って書いてあったけど、子猫ちゃんみたいに可愛いじゃない!」

大人しく撫でられていると、因幡さんがギュッと私を抱き締めた。その力の強いこと。

「そいつ、本当に十六歳なのか?」

しかし、天地さんは私たちの様子には目もくれないで、ウーンとひと声唸ると唐突に訊ねた。

「戸籍とか見せてもらっていないので確証があるわけでは有りませんが、おそらく」
「ということは子供……ということか?」

天地さんが頭を掻きむしる。えっ? あれ? その拍子に円形の脱毛部分を二個も見つけてしまった。

目をパチパチさせていると、因幡さんがシッと自分の唇に人差し指を立てた。そして、ソッと耳打ちする。

「蒼穹の地雷を踏むことになるから、ソレ、絶対に口にしちゃダメよ」

それはもう恐ろしいことになるらしい。コクコクと頷いていると、天地さんが突然椅子から立ち上がった。

「おい、因幡の白兎。俺らは大きな思い違いをしていたかもしれない」
「どういうこと?」

因幡さんの顔が引き締まる。