より精密な分析結果はまだらしいが、症状からツツジ科アセビ属に含まれる毒に似ているとのことだ。

「あたしの見立ては、アセビの花からとった蜂蜜がドリンクに混入されたんだと思う」

そういう事例が有るらしい。

アセビは盆栽などの観賞用にされるほど可愛い花を咲かせるが、花も葉も枝も毒性があり有毒植物としても有名だそうだ。

「――ということは、ちょっと待って下さい」

いったい何なんだ、このハードボイルドな展開は?

「じゃあ、青柳先生もしくはカン・ライさん。または、二人が共謀して私に毒入りドリンクを飲ませたということですか?」
「その人たちが飲み物を用意したとしたら、そういうことになるわね」
「ん……? カン・ライって誰だ?」

天地さんが因幡さんとの会話に割り入る。

「世継病院の理事、カバー・ライという人の孫だそうです」
「おい、因幡の白兎、そんな理事、あの病院にいたか?」

天地さんの問いに、「ちょっと間ってね」と言って、因幡さんはデスクの上に置かれたパソコンを立ち上げた。

「――ううん、関係者の名簿には載っていないわ」
「やっぱり。どんな奴だった?」
「どんなって……ひと言で言えば、美しい月のような冷たい感じの人かなぁ」
「端的で分かり易いわぁ。クールな美形、〝氷の王子様〟ってことね?」
「そんな抽象的な表現で良く理解できるな」

呆れ眼で天地さんは「もっと詳しく話せ」と命令する。