「ダメよ、お目々を擦っちゃ」
「白衣を着た美形のボディービルダー?」

ぶはっ、と吹き出す声が足元の方から聞こえた。

「お前、喩えるのが上手いな」

少し状態を起こして声の方を見る――と、天地さんだった。

「やだぁ、白衣を着た〝美形〟までは合ってるけど、ボディービルダーって……傷付くわぁ」

両頬に手を置きクネクネと身をよじりながら、「哀しい」とか言われたら、「すみません」と謝るしかないが、マッチョな身体にピッタリとフィットした白衣を着る貴方もイケないのでは、と心の中で言い訳をする。

「ところで……どちら様ですか?」
「ああ、このド変態は医者の〝因幡の白兎〟だ」

本人ではなく天地さんが謎の紹介をする。

「イナバのシロウサギ? 古事記に出てくる大国主神が助けたという?」
「そう呼ぶのは蒼穹だけ。それに、ド変態と思っているのもねっ!」

プクッと頬を膨らませる因幡さん。でも……土台がイケメンなだけに、何とも残念な人になる。

「因幡の白兎と書いて〝いなばはくと〟と読みます。よろしくね、ミライちゃん」

ミライちゃん? いきなり名前呼びとは、随分とフランクな人だ。

「会いたかったわ。資料を見たときからどんな子か楽しみだったの」

助手として登録されたと同時に、関係各所にデーターが送られたとのことだ。

「で、こいつは俺が拘わっている部署の担当医&監察医だ」