「カン様は十六歳でありながら、既に医学博士の学位を持つ天才です。お生まれはヨーロッパですが、現在は渡米され、ハーバード大学で学ばれています」

若いだろうとは思ったが、十六歳――年下!

驚き目を剥くが、この手の話を最近どこかで聞いたような……と思い、思い出す。天地蒼穹、彼もだった。飛び級やら何やらで大学を渡り歩いていたと言っていた。

――天才って変人が多いと聞いていたけど、美形も多いのだろうか?

「僕の顔に何か付いていますか?」
「はい?」

〝付いている〟が〝憑いている〟に聞こえ、慌てて意識を戻すと「いいえ」と答えた。

「ただ、綺麗なお顔だと思いまして……あっ」

両手で口を覆い、思わず突いて出た言葉を引っ込めようとしたが、時既に遅し――フッとカンさんが口元を綻ばせた。

クールな顔に華の微笑み。見惚れるほど魅了する蠱惑(こわく)の笑みだった。

「ありがとうございます。しかし、容姿はあくまで入れ物に過ぎません」

だが、次の一瞬、背筋が凍る。
微笑む美しい顔に恐ろしげな鬼面(きめん)がオーバーラップして見えたのだ。

「見掛けに(まど)わされてはいけませんよ」

〈ここにいてはダメ! 逃げて!〉脳内で誰かが囁く。

「あっ……あの、私、これで失礼します」

恐怖――それを感じ、床に足を下ろした途端、膝がガクリと折れる。

「ミライ君、無理はいけないよ」

クスッと嗤った青柳医師が私を抱えベッドに連れ戻す。