アイリッシュグレーの髪といい、透き通るような白い肌といい……ヨーロッパ方面の血が混じっているのだろうか?

日本人離れしたその容姿に目を見張るばかりだが、同時に、あまりにも整いすぎているせいか、冷淡そうに思えた。

「驚かせたみたいですね?」

男性とも女性とも言えない中性的な雰囲気――そんな捉えどころのない人が、ランウェイを歩くモデルのようにこちらに近付いて来た。

そして、青柳医師の横に並ぶように立った。背は医師の肩ほどだ。おそらく私より少し高いぐらいだろう。

しかし、醸し出されるオーラは半端ないほど強烈だった。圧倒されていると、青柳医師が何故か彼から半歩下がった。

「僕は世継病院の理事の一人、カバー・ライの孫、カン・ライです」

ああ、だからか、とその理由を悟る。

「カンと呼んで下さい。君が倒れたちょうどその時、そこを通りかかったもので……こちらに運ばせたのは僕が勝手にしたことです。だから、何の気遣いも要りません」

わざわざ最上階まで? そんな疑問が一瞬だけ脳裏を掠めた。だが、理事の孫という立場ならそれが普通なのかもしれない、と自己完結する。

「ご迷惑をお掛けしました。外場ミライと言います。日本語……お上手ですね」
「ええ、祖父が日本贔屓(にほんびいき)で、幼少の頃から何度も来日していましたから――日本は第二の故郷と言って過言では無いでしょう。今回も九月末まで滞在する予定です」