自分の身体の後ろに隠れブルブル震えている彼は、まるで子犬のようだ。

「だろ? 本来、魂とはこういう無垢なものだ。こいつが生き霊だから分かり易いんだがな」
「どういう意味ですか?」
「死を迎えると共に、お前が言ったように穢れた身体の記憶が全て魂に移行される。悪人は悪人の魂になるということだ。天国行きと地獄行きはそこで決定付けられる」

「おお!」と思わず唸ってしまった。

「人生は何度でもやり直しが利くというのは、魂が美しいままだったからですかぁ」

「なるほど」と頷いていると、「だがな」と天地さんの顔が険しく曇る。

「一度犯した罪に対する代償は大きい。それは、清く美しい魂を身体の奥底に隠れさせるくらいにな。沈んでしまった魂を浮上させるには並大抵の努力ではダメだ。それこそ、死に物狂いで善行を積まなければならない」
〈そうなんだぁ……罪を償うって大変なことなんだぁ……〉

声の方を見ると、壱吾君がポロポロ涙を零していた。

「彼、どうして泣いているんですか?」

小声で天地さんに訊ねると、「後悔だな」と答えた。

「魂と身体が一つになりかけている、ということだ。我々の会話が彼の琴線に触れたんだろう」

「あっ、壱吾君の霊体が薄くなっていく」そして、彼の霊が消えた途端、壱吾君の口から「フーッ」と大きく息が吐き出された。