「ミライちゃん……」

私の顔を見るなり翠花さんの目に涙が浮かぶ。

「もう、勝手に!」追い付いた祖母がメッと私を小さく睨む。それでようやく息ができた。それほど翠花さんの姿は痛ましかった。

「塔子ちゃん……ありがとう。入って」

許可は得ていたが、大っぴらにはしたくないのだろう。翠花さんに誘われ、私たちはすぐ部屋に入った。

「翠花さん、こちらが言っていた天地さん」
「お初にお目にかかります。この度は孫息子のために……本当にありがとうございます」

そう言いながら翠花さんはポロポロと涙を零し始めた。

「お役に立てるか分かりませんが、拝見させて頂きます」

天地さんは私に、一緒に視ろ、というように目配せする。そして、挨拶もそこそこにベッドに近付いて行った。

『八壱も一筋縄ではいかない子だったけど、壱吾はそれ以上で』と、困った顔をしながらも翠花さんは孫息子の逞しい成長ぶりにいつも目尻を下げていた。だが、青白い顔でベッドに横たわる彼に、その逞しさは見受けられない。

天地さんはベッドの横あったパイプ椅子を彼の枕元に近付け、腰を下ろした――でも、そんなことをしなくても、もう、彼には分かっていると思う、壱吾君がどんな状態にあるか。

〈うわぁ、お姉さん、美人だね〉

だって、壱吾君はここに――私のすぐ側に立っていた。