「天地さん、ご足労頂きありがとうございます。翠花さんは壱吾ちゃんの所にいます。言われた通り、彼女に面会の許可を取ってもらいました」

集中治療室からは出られたらしいが、未だ目覚めないので家族以外面会謝絶となっているようだ。

祖母の後に続きエレベーターに乗り込むと、祖母は壱吾君がいるという三階のボタンを押した。

「神経内科、脳神経外科」

ボタン横のプレートを読み上げる。

「脳神経外科病棟の方よ。異常はないらしいけど、一応ね」
「だったら、青柳先生もいるのかな?」
「青柳先生とは?」

天地さんの質問に祖母が答える。

「神経外科のお医者様でミライの担当医でもあるんですよ」
「担当医?」
「あらっ? この子ったら話していなかったんですか?」

怪訝な顔でこちらを見る天地さんに、祖母は困ったような顔になる。

「だって、あんな話聞かされても面白くも何ともないでしょう? それに不幸自慢みたいで嫌なのよね、あの話をするの」

だから、昔からの知人以外、私があの事故の犠牲者だと知らない。

「隠し事をするな、と言ったのは君じゃなかったか?」

祖母の手前、いつものように〝お前〟扱いしない天地さんだが、こちらを見る眼は、触れれば切れる、というほど鋭かった。

「別にかくしていたわけじゃ……」
「だったら話して!」