もしかして、と思う。

わたしは病院で、泣いている男の子と話したことがあった。

建物の影に隠れるようにしてひっそりとしゃがんで、膝に顔を埋めて泣いていた、小さな、黒髪の男の子。


顔をあげてとわたしが言って、男の子はゆっくり顔をあげた。

目にかかる長い前髪の隙間に見える潤んだ瞳で、わたしを見つめた。


「あ。まさか……」


あのときの男の子が、広瀬くんーー?


わたしは目を凝らして、目の前の広瀬くんをじっと見つめた。


「思い出した?」


ときみは少し意地悪っぽく、ニッコリ微笑んだ。

「……」

わたしは動揺を隠せないまま、こくりと頷いた。