「ひとつだけ、あります」

「ほんとに?それ、どこ……」

目を光らせる看護師の言葉を遮って、

「それは、言えません」

わたしはきっぱり言った。

「どうして?お願い、緊急事態なの」

「ごめんなさい。どうしても、言えないんです」

だってそれは、きみがわたしだけに教えてくれたことだから。

きみとわたしの、秘密だから。


「そのかわり、わたしが行きます」



ーーねえ、広瀬くん。

きみはいま、どこにいるの。

なにを考えているの。

わたしもそこに行きたい。行っでもいいかな。

きみが抱えている不安、怖さを、わたしにも分けてくれないかな。

抱えきれるかどうかなんてわからないけれど、知りたいんだ。

だから、お願い。もうひとりで悩まないで。

わたしがいるから。いますぐ、そばに行くから。