広瀬くんがいなくなったーー。
突然の事態に、わたしの頭はパニックになった。
「いなくなったって、どういうことですか?ほんとにどこにもいないんですか?」
「ええ、病院のなかはほとんど探したわ」
彼女は困りはてた顔で頷く。
「なにか心当たりはない?彼が行きそうな場所とか、知ってることがあれば、教えてくれないかしら」
「心当たり……」
ドクン、ドクン、と心臓を打つ音が速くなる。
心当たり。広瀬くんが、行きそうな場所。
ーーないわけじゃ、ない。
ひとつだけ、わたしが知ってる場所がある。
『嫌なことがあると、ここに来るんだ』
『愛音だけ。ほかの誰にも言ってない。』
もしかしてーー、
「心当たりがあるの?」
看護師が伺うようにわたしを見る。