病院前のバス停で降りて、早足できみのところへ向かった。

急ぎの用なんてないけれど、早くきみの顔が見たかった。

エレベーターを降りると、目の前をバタバタと看護師さんが通り過ぎていった。

「ちょっと、どうなってるの!」

「す、すみません……!」

なんだろう、と気になって振り返る。いつもは静かな廊下が、なんだか慌ただしい。

なにか問題でもあったのかな。

わたしは不思議に思いつつ、ガラリと病室のドアを開けた。

「えーー」


ベッドの上には、誰もいなかった。

布団がクシャクシャになって、抜け出したみたいな跡だけが残っている。

ドクン、と心臓が大きく鳴った。