改札を通って、階段を上ってホームに行く。まだ昼過ぎなこともあって、人はまばらだった。
そのなかに、一際目立つ人物が立っていた。
ふわふわしたミルクティー色の長い髪。冬なのにミニスカートで、長い足を交差させて壁にもたれて立っている人。
乃亜さんだ。
わたしは思わず足を止める。
できれば会いたくなかったわたしは、くるりと背を向けたーーけれど、
「待ちなさいよ」
「ひいっ」
ガシッと肩を掴まれてしまい、あっさり逃げ場を奪われてしまう。
「あんたを待ってたのに逃げるとかあり得ないんだけど。次あたしを見て逃げたら締めるから」
こ、怖い……。
「それに、今日はそういうのじゃないから」
「え?」
「これ、渡そうと思って」
と、乃亜さんは、手に持っていた紙袋を差し出して言った。
「あんたにあげる。撮影でもらったのとかだけど、一応、全部未使用だから」
紙袋に入っていたのは、たくさんのメイク道具や、マニキュア、それとメイクの本。
「あんた、慧のこと好きなんでしょ。ならちょっとは可愛くしようとしなさいよ。地味な女なんて慧には似合わないから」
「乃亜さん……」
わたしは戸惑いながら、それを受け取った。手に持つと見た目より重たくて、これをわざわざ学校まで持ってきてくれたんだと思うと、嬉しかった。
「ありがとう」
そう言うと、乃亜さんは面白くなさそうにふいっと顔を背ける。