「そうだったんだ……」

「こんなことは子どもに話すことではないと思っていままで言わなかったが、なにも言わなかったことで余計に辛い思いをさせてしまった。すまなかった」

「い、いいよ、そんな」

お父さんに謝られたことなんて初めてで、どうしていいかわからなくなる。

「いや、よくない。子どもに辛い顔をさせるのは、半分は親の責任だ」

としかし、お父さんは頑固だった。

「母さんも、おまえのことを相談したくても相手がいなくて、ひとりで支えようと必死だったんだろう。母さんにも申し訳ないことをしたと思っている」

「お父さん……今日、なんか、別人みたい」

わたしはぽつりとつぶやいた。

「そうだな」

とお父さんは苦笑する。

「現実と一生懸命に向き合おうとしている愛音を見て、いつまでも逃げてる場合じゃないと気づかされたんだ」

駅に近づくにつれて、窓の外の景色が明るくなっていく。暮れていく街にキラキラと浮かぶ駅前のイルミネーション。まさかこの景色を、お父さんと見ることになるとは、思わなかった。

初めてこんなに長く、お父さんと話をした。

知らなかったことが、たくさんあった。家族のこと。お父さんの本音。

ーーわたしも、おなじだった。ずっと、辛い現実から逃げていた。

家族の溝ができて、だんだん会話がなくなって、お母さんのプレッシャーに押し潰されそうになって、家に帰りたくなくなって。

ずっと、逃げていた。表面だけを見て、そこにあるはずの本当の気持ちから目を逸らしていた。

でも、問題を先延ばしにしていただけで、結局なんの解決にもならなかった。

わたしがいまするべきこと。できること。したいこと。たくさんありすぎて、混乱しそうになる。

でも、少し落ち着いて、できることからひとつずつやってみよう。

そうしたら、なにか、変わるかもしれないから。