「久しぶり、広瀬」

と石田くんが歩み寄って、

「なに倒れてるんだ、馬鹿野郎」

いつもと変わらない憮然とした口調で言った。


「い、石田くん……?」

「なんだこのバカみたいなオレンジ頭は。髪なんか染めて調子乗ってるからこんなことになるんだ。身を引き締めろ」

髪の色は関係ないと思うけど……。

「さっさと起きろ、広瀬。倉橋さんが心配してるぞ。いつまでも呑気に寝てるなら、おれがもらうから」

「…………え?」

いま、なんて言った?もらう?

「おれは言いたいことを言ったから、これで失礼する」

「えぇ!?」

石田くんを慌てて呼び止めた。

「ーーちょ、ちょっと待って、いまのなに?」

ドアを閉めて、わたしはしどろもどろに尋ねる。

「そのままの意味だよ」

石田くんは前を向いたまま眼鏡に手をかけて言う。

「え、そのままって、え?」

「だからーー」

振り向いた石田くんは、見たことないくらい真っ赤な顔をしていた。

「倉橋さんのことが、好きってことだよ!」


「!?」