そう、と石田くんは頷く。
「やりたいことがありすぎるから、勉強なんてしてる暇ないって言うんだ。こっちが受験勉強しながら教えてるのに、ふざけるなと思ったよ」
「うわ、言いそう」
「その上、成績はそこそこ上がったにもかかわらず、入ったのは受験さえすれば誰でも入れる三高。理由を訊けば、制服がないからとか言う。制服は自由じゃないから嫌だとかなんとか。意味がわからなかった」
「そうだね」
石田くんには悪いけれど、わたしは、広瀬くんらしいなと思った。
「でも、ほかの理由も、もしかしたらあったのかもしれないな」
「え……?」
それって、とわたしが尋ねる前に、
「まあ、おれにはあいつの考えなんて、わからないしわかりたくもないけどな」
電車が止まって、ドアが開く。人が一斉に押し出されるように出て行く。
行こう、と石田くんが立ち上がって言うから、わたしは慌ててその後に続いた。