宮内漁港の寂《さび》れ具合からも、駅前のロータリーの静けさからも、あまり期待はしていなかったが、商店街は予想以上に賑わっていた。

 観光地でもない場所を若い女が一人歩くと、否が応でも目についてしまう。特にこういった田舎町にはよくあることだが、周囲の視線が絡みつき、時には肌を刺す。

 余所者《よそもの》に対する抗体ができていないのだ。
 
 とはいえ、そのようなある種の歓迎方法にもぼちぼち慣れてきていた。何も法を犯しているわけでもないし、地元住民の生活を脅かすわけでもない。観光地と銘打ってる場所以外を余所者が歩いてはいけないということもない。要は堂々と観光客面をしていればいいのだ。

 港町だからか商店街は"鮮魚"のノボリの立つ魚屋と寿司屋が目立っていた。

 それ以外には本屋、ドラッグストア、少し昔風の服飾の店――ブティック○○のようにブティックで始まる店、さらには喫茶店、居酒屋と飲食店が続き、鞄屋と靴屋が並んだところで商店街は終わっている。
 
 基本的に商店街は一筋だけで、交差する道にも平行する一本外れた道にも店らしい店はない。

 商店街として決して大きいものではないから、歩くのにそんなに時間は要しない。

 海鮮処末広は、商店街のはずれにほど近い場所にあった。暖簾の前に立ち止まり、一つ大きな息を吐く。

 この町に来て三日目。

 実は漁港を訪れた次の日は、商店街には行かなかった。何となくだが今田が待ち構えているような気がしたからだ。