☆ ☆ ☆
「私たち竜人族は、魔人族の使徒なのです」
「魔人族の使徒?」
ザハラの言葉に、私は困惑した表情を浮かべる。
すると、ザハラは懐かしむように語り始めた。
「それは初代魔人王と、我らの先祖が仕えていた光の巫女が、互いに手を取り合った時から始まりました。『どんな事が起ころうとも、どんな厄災が降りかかろうとも、私たちは必ずあなた方の助けとなりましょう』。そして、魔人王もこう応えられたそうです。『約束しよう。この身が尽きる瞬間まで、我らはあなた達の力となり、あなた達の助けとなりましょう』と。魔人王と光の巫女は互いに誓い合ったのです」
「魔人王と光の巫女……」
私は、その話に聞き覚えがあった。
いつ、どこで聞いたのかは思い出せない。
だけど、頭の中にぼんやりと浮かぶ光景があった。
確かそれは――
「良いですかソフィア。あなたにとって魔人王は――」
その時、私の頭に激しい頭痛が走った。思い出そうとした記憶にノイズがかかり、記憶は闇の中へと消えていく。
「ですが、それはもう何百年も前の話です。今となっては、魔人族は人間族によって滅ぼされてしまったのですから」
ザハラは淡々と事実を述べる。
その言葉に、私は微かに唇を震わせた。
「……そう、だよ。魔人族は人間族によって滅ぼされた。だから私は……」
魔人族なんかじゃない! そう叫びたいのに、なぜか言葉が出ない。言ってはいけないことだと思ってしまった。
「いいえ、あなたは魔人族です。その髪と瞳が何よりの証拠なのですから」
ザハラの言葉に、私はハッと目を見開いた。言われて初めて気がついたのだ。
お父様とお母様は 「あなたの髪と瞳は特別で珍しい』と言っていた。だから、小さい頃は特に気にすることもなかった。
だが、よく思い出してみれば、これまで自分と同じ髪色や瞳の色をした人を見たことがない。
それは、自分がたった一人の魔人族だから。
「私はさっき、一ヶ月前に禍々しい魔力を感じたと言いましたね?」
「……うん」
「私たち竜人族はその力を感じた時、みな喜んだのです」
「よ、喜んだって……そんなのどうかしているよ!」
私は驚きを隠せない。
あんな禍々しい魔力を感じて、喜ぶだなんてどうかしているとしか思えなかった。
「どうかしている? いいえ、私たちはずっと待ち望んでいたのですから。魔人族が滅び、私たちの存在意味が失われていく中で、私はあなたという希望に出会えたのです」
ザハラは、私の戸惑いを無視するように言葉を重ねる。
「私たちが人間族から身を隠し、この地で息を潜めてきたのは、あなたのような存在がいつか現れると信じていたからです。魔人族の力を、そして竜人族の誇りを取り戻すために。あなたこそが、そのための鍵なのです」
「私は……そんなすごい存在なんかじゃない」
私は弱々しくそう答える。
自分の運命が知らないところでこんなにも重いものだったと知って、どうしていいかわからなかった。
「ソフィア、あなたは誰よりも強い心を持っています」
「もし、あなたの身に何かあっても……私が必ず守る」
ザハラの言葉と、頭の中で響く声が重なって私は混乱した。
「いいえ。あなたは私たちにとって、まさに奇跡そのものなのです」
ザハラは冷たく言い放つと、私の返事を待たずに歩き始めた。
私は、彼女の背中をただ呆然と見つめるしかなかった。
「私たち竜人族は、魔人族の使徒なのです」
「魔人族の使徒?」
ザハラの言葉に、私は困惑した表情を浮かべる。
すると、ザハラは懐かしむように語り始めた。
「それは初代魔人王と、我らの先祖が仕えていた光の巫女が、互いに手を取り合った時から始まりました。『どんな事が起ころうとも、どんな厄災が降りかかろうとも、私たちは必ずあなた方の助けとなりましょう』。そして、魔人王もこう応えられたそうです。『約束しよう。この身が尽きる瞬間まで、我らはあなた達の力となり、あなた達の助けとなりましょう』と。魔人王と光の巫女は互いに誓い合ったのです」
「魔人王と光の巫女……」
私は、その話に聞き覚えがあった。
いつ、どこで聞いたのかは思い出せない。
だけど、頭の中にぼんやりと浮かぶ光景があった。
確かそれは――
「良いですかソフィア。あなたにとって魔人王は――」
その時、私の頭に激しい頭痛が走った。思い出そうとした記憶にノイズがかかり、記憶は闇の中へと消えていく。
「ですが、それはもう何百年も前の話です。今となっては、魔人族は人間族によって滅ぼされてしまったのですから」
ザハラは淡々と事実を述べる。
その言葉に、私は微かに唇を震わせた。
「……そう、だよ。魔人族は人間族によって滅ぼされた。だから私は……」
魔人族なんかじゃない! そう叫びたいのに、なぜか言葉が出ない。言ってはいけないことだと思ってしまった。
「いいえ、あなたは魔人族です。その髪と瞳が何よりの証拠なのですから」
ザハラの言葉に、私はハッと目を見開いた。言われて初めて気がついたのだ。
お父様とお母様は 「あなたの髪と瞳は特別で珍しい』と言っていた。だから、小さい頃は特に気にすることもなかった。
だが、よく思い出してみれば、これまで自分と同じ髪色や瞳の色をした人を見たことがない。
それは、自分がたった一人の魔人族だから。
「私はさっき、一ヶ月前に禍々しい魔力を感じたと言いましたね?」
「……うん」
「私たち竜人族はその力を感じた時、みな喜んだのです」
「よ、喜んだって……そんなのどうかしているよ!」
私は驚きを隠せない。
あんな禍々しい魔力を感じて、喜ぶだなんてどうかしているとしか思えなかった。
「どうかしている? いいえ、私たちはずっと待ち望んでいたのですから。魔人族が滅び、私たちの存在意味が失われていく中で、私はあなたという希望に出会えたのです」
ザハラは、私の戸惑いを無視するように言葉を重ねる。
「私たちが人間族から身を隠し、この地で息を潜めてきたのは、あなたのような存在がいつか現れると信じていたからです。魔人族の力を、そして竜人族の誇りを取り戻すために。あなたこそが、そのための鍵なのです」
「私は……そんなすごい存在なんかじゃない」
私は弱々しくそう答える。
自分の運命が知らないところでこんなにも重いものだったと知って、どうしていいかわからなかった。
「ソフィア、あなたは誰よりも強い心を持っています」
「もし、あなたの身に何かあっても……私が必ず守る」
ザハラの言葉と、頭の中で響く声が重なって私は混乱した。
「いいえ。あなたは私たちにとって、まさに奇跡そのものなのです」
ザハラは冷たく言い放つと、私の返事を待たずに歩き始めた。
私は、彼女の背中をただ呆然と見つめるしかなかった。


