​ザハラは村の中心部へと足を進めた。

すると、彼女の姿に気づいた村人たちが、自然と彼女の周りに集まってくる。

​「よぉ、ザハラ。今帰ったのか?」

​「ザハラお姉ちゃん! 一緒に遊ぼうよ!」

​「ザハラ様。ちょうど採れたての果実がございまして」

​村の人々は心からの笑顔で、口々に彼女に声をかけている。

その表情には、偽りのない信頼と愛情が満ちていた。

​ザハラは一人ひとりに丁寧に声をかけていく。

小さな子供には優しく頭を撫で、年老いた竜人族にはその日の様子を尋ねた。

彼女が言葉を交わすたびに、村人たちの笑顔はさらに深まっていく。

​「ありがとう、後で皆でいただきましょう」

​採れたての果実を差し出した村人には、微笑みながらそう答えた。

その声は巫女としての威厳と、一人の女性としての温かさを同時に感じさせた。

​その光景を見て、私たちは自然と笑みをこぼした。

​やっぱり、彼女は悪い人じゃない。

だって、これほどまでに村人たちから慕われているのだから。

​そう確信して空を見上げた時、視界の端に村の丘の上に立つ、遺跡らしきものがちらりと入った。

​「遺跡……?」

​こんなところに遺跡があるなんて。もしかして、探している竜はあそこにいたのだろうか?

​「ソフィア。俺たちも行くぞ」

​アレスの声に、私は我に返った。

「う、うん!」

​アレスたちの背中を追いかけながら、私はもう一度、その遺跡を見上げた。

そして、その疑問を胸に秘めたまま、ザハラたちの元へと視線を戻したのだった。