☆ ☆ ☆
「ここが六月の岬だ」
ベルに導かれ、森を抜けると、目の前に広がる光景に息をのんだ。
夜の帳が下りた森とは一変し、キラキラと太陽に照らされた海が広がり、潮の香りが風に乗って運ばれてくる。
その波間に、ぽつんと岬の先端に佇む墓らしきものが見えた。
「ここが……六月の岬」
なぜか心惹かれるように、私はその墓へと歩き出す。
「おい、ソフィア! 危ないぞ!」
背後からアレスの声が聞こえたが、私は振り返らなかった。
「大丈夫だよ」
崖の先に建つ墓の前にしゃがみ込み、ひどく風化した文字を指でなぞる。
「エ……ル?」
名前の一部は風化してしまっていて、読めたのは【エル】という二文字だけだった。
立ち上がり、墓を見下ろす。
そして、崖の先端から広がる海を一望した。
その瞬間、胸の奥から込み上げてくるものがあった。
「ここ、見覚えがある気がする」
私の言葉に、アレスが戸惑ったような声を出した。
「……えっ」
「初めて来たのに?」とカレン。
「うん……」
そう、今日初めて来たはずなのに、この場所を昔から知っているような気がした。
どうして、こんなにも懐かしいと感じてしまうのだろうか?
「私の案内はここまでだ。後は、本人たちから直接話を聞くんだな」
ベルはそう言い残し、森の中へ戻ろうとする。
「本人つったって、手紙の主なんて本当に来るのか?」
ロキの言葉にベルは軽く振り返り、不審に思う私たちを冷めた目で一瞥し空を見上げた。
「いるじゃないか。すぐ上に」
「……上?」
その言葉に、私たちは一斉に空を見上げた。
すると空高くに黒い影が見えたかと思うと、その影はこちら目掛けて一直線に突っ込んできた。
「なっ!」
「みんな、逃げろ!」
カレンは瞬時にロキの手を掴んで左へ飛び退く。
アレスとムニンは、私のもとへ駆け寄ってきた。
「ソフィア!」
アレスに力強く抱きしめられ、私たちはそのまま地面に倒れ込んだ。
直後、彼らが立っていた場所に何かが激突し、爆音と共に土煙が舞い上がった。
「ここが六月の岬だ」
ベルに導かれ、森を抜けると、目の前に広がる光景に息をのんだ。
夜の帳が下りた森とは一変し、キラキラと太陽に照らされた海が広がり、潮の香りが風に乗って運ばれてくる。
その波間に、ぽつんと岬の先端に佇む墓らしきものが見えた。
「ここが……六月の岬」
なぜか心惹かれるように、私はその墓へと歩き出す。
「おい、ソフィア! 危ないぞ!」
背後からアレスの声が聞こえたが、私は振り返らなかった。
「大丈夫だよ」
崖の先に建つ墓の前にしゃがみ込み、ひどく風化した文字を指でなぞる。
「エ……ル?」
名前の一部は風化してしまっていて、読めたのは【エル】という二文字だけだった。
立ち上がり、墓を見下ろす。
そして、崖の先端から広がる海を一望した。
その瞬間、胸の奥から込み上げてくるものがあった。
「ここ、見覚えがある気がする」
私の言葉に、アレスが戸惑ったような声を出した。
「……えっ」
「初めて来たのに?」とカレン。
「うん……」
そう、今日初めて来たはずなのに、この場所を昔から知っているような気がした。
どうして、こんなにも懐かしいと感じてしまうのだろうか?
「私の案内はここまでだ。後は、本人たちから直接話を聞くんだな」
ベルはそう言い残し、森の中へ戻ろうとする。
「本人つったって、手紙の主なんて本当に来るのか?」
ロキの言葉にベルは軽く振り返り、不審に思う私たちを冷めた目で一瞥し空を見上げた。
「いるじゃないか。すぐ上に」
「……上?」
その言葉に、私たちは一斉に空を見上げた。
すると空高くに黒い影が見えたかと思うと、その影はこちら目掛けて一直線に突っ込んできた。
「なっ!」
「みんな、逃げろ!」
カレンは瞬時にロキの手を掴んで左へ飛び退く。
アレスとムニンは、私のもとへ駆け寄ってきた。
「ソフィア!」
アレスに力強く抱きしめられ、私たちはそのまま地面に倒れ込んだ。
直後、彼らが立っていた場所に何かが激突し、爆音と共に土煙が舞い上がった。


