​「あの女の子…ソニヤは言っていた。あの晩、村を抜け出してまでそこにいたのは、両親を殺した人物に聞きたいことがあったからだと」

​「聞きたいことだと?」

​ムニンの言葉に、ブラウドは顔を歪めた。それを見たムニンは目を細め、言葉を継ぐ。

​「なぜ両親を殺したのか、そう問いかけたかったそうだ」

​「っ!」

​ブラウドは驚きに目を見開く。

当然、私たちも同じだった。なぜソニヤという女の子は、両親の仇にそんなことを聞こうとしたのだろう? 

普通なら、そんな行動は考えられない。

私だったら…絶対に、そんな真似はできない。

​「大したガキだ。いや、ガキとは思えない思考だな」

​「その意見には僕も同意するよ。話を聞いたとき、正直どうかしていると思った。でも……」

​ムニンはブラウドをまっすぐ見据えて言った。

​「彼女は、自分の考えが間違っているとは、思っていなかったんだ」

​「……」

​「そういうことは親から教わるものだからね。でも、今の彼女には両親がいない。ひとりぼっちで、その考えを否定してくれる存在はもういないんだ」

​「……ムニン」

​もしかして、ムニンはその子に自分を重ねているのだろうか? 

彼にも、同じような過去があったのだろうか……?

​「……だから、お前も言うのか? 家族の仇を討つのではなく、話を聞けと?」

​「……」

​ムニンはブラウドの言葉に頷かなかった。

​その様子にブラウドは軽く舌打ちすると、鞘から剣を抜き、切っ先をムニンに向ける。

その光景に、焦ったアレスは右手を構えた。