「ソフィア、体の検査をするから、服を脱いでくれる」

​「うん」

​カレンに促され、私は素直に服を脱ぎ始めた。

​夜遅くにクロッカスに到着し、アレスが手配してくれた宿で一夜を過ごした私たちは、すでに朝を迎えていた。

部屋は当然、男女別々だ。

​「ソフィアちゃんと同じ部屋がいい!」

と駄々をこねるロキを、アレスががっしりと拘束する。

ずるずるとロキを引きずっていきながら、アレスは「じゃあ、おやすみ」と一言残し、隣の部屋へと消えていった。

​きっと隣の部屋から大声で駄々をこねるのだろうと思っていたから、その静けさに驚いた。

おかげでぐっすり眠れたけれど、朝になっても物音ひとつしないのは、少し不安だった。

​「はい、ソフィア、こっちに来て」

​カレンに呼ばれ、ベッドの縁に腰掛ける。

カレンは何も言わず、私の手首にそっと指を当てて脈を測ると、今度は首筋に触れた。

続いて、服を脱いだ私の体に、掌をかざしながらゆっくりと滑らせていく。

温かい光がカレンの手から放たれ、私の体を優しく包み込んだ。

​「……うん、体に異常はないわね。雫も今のところ、安定しているようだわ」

​「よかった……」

​カレンの言葉に、私は安堵の息を吐き、胸元にそっと手を当てた。

​雫は今のところ、いつもの調子を保っているらしい。

私自身も、体調の違和感は特に感じない。

アレスの仕事が終わるまで、この状態が続いてくれることを願うばかりだ。

​脱いだ服に再び袖を通そうとしたその時、じっと私の様子を伺っていたカレンが口を開いた。

​「でも、ソフィア。雫の調子が良いからといって、魔法を使うのは控えてちょうだい」

​その言葉に肩が跳ね、私はすぐに言い返した。

​「だ、大丈夫! みんなに迷惑かけたくないし、魔法は使わないから」

​「……そう。それならいいのだけど」

​心配そうなカレンの視線を感じながら、ふとベッドの上を見ると、テトが起きたようだ。

大きく伸びをして、黒い尻尾を左右に振りながら口を開く。