​そんなことを言いながら、彼は右目に巻かれた包帯をゆっくりと解いていく。

​「まあ、別に構わないか。子供の狼人族には興味ないし」

​包帯が解かれ、あらわになった右目がゆっくりと開かれる。

それは、彼の左目とは全く違う色をしていた。血のような、ルビーのような、真紅の瞳。

その目が大きく見開かれた瞬間、私の姿を捉えた。

​「っ!」

​その瞳を見た途端、私の体の自由が利かなくなった。

まるで操られているかのように、意識が遠のいていく。

地面へと倒れていく私の体を、誰かが優しく支えてくれるのを感じながら、私は意識を手放した。

​「よし、これで準備完了」

​意識を失った狼人族の女の子の体を、そっと地面に寝かせ、俺は村の方へ視線を向けた。

​「さあ、この状況について詳しく話してもらおうじゃないか、フォル」

​俺が少し目を離した隙に、なぜこの森で戦争が起きているのか。

そして、この森を覆っている不気味な闇の魔力の存在について、知っていることをすべて聞かせてもらう。

​右目に再び包帯を巻き、フードを被り直して、フォルの家へと歩き出す。

​「ここもずいぶんと変わったよな」

​そう呟きながら、俺は村の中を見渡す。

初めてここに来た時は、もっと綺麗で、栄えていた。

兎人族とも仲良くやっていたはずなのに、一体何が原因で……。

​「まあ、心当たりはあるけどな……」

​だが、その件に関して断定するにはまだ早い。

まずは狼人族、そして兎人族の長たちから、それぞれの話を聞いてからだ。