ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

​兎人族たちの気配が完全に消えたことを感じ、僕はブラウドが消えていった方角を静かに睨みつけた。

​「また今度会ったら、ゆっくりと互いについて話そうじゃないか」

​その言葉が、ブラウドが僕を「元」ではない、一族の仲間だと見なしていることを意味していると分かった。

僕は拳を強く握りしめる。

​「誰が……」

​小さく、だが怒りを込めて呟いた。

​「あ、あの!」

​背後から少女の声が聞こえ、僕はそっと息を吐いてゆっくりと振り返る。

少女は顔を赤く染め、深々と頭を下げてきた。その姿にギョッとして、頬に一筋の汗が伝う。

​「た、助けてくれてありがとうございました! 私はは狼人族のソニヤって言います」

​少女、ソニヤはそう言って、深紅の瞳を細めて優しく微笑んだ。

​僕は彼女を見下ろしながら、目線を合わせるようにしゃがみ込み、問いかけた。

​「ソニヤか。ところで、なんで君みたいな子供が、こんな夜遅くにここにいたんだ?」

​その質問に、ソニヤは答えにくそうに目をそらす。

​「君も知っていると思うけど、子供の狼人族は夜の外出を禁止されている。成人するまで村の外に出ることも禁じられていて、もし破れば重い罰を受けることになるんだぞ」

​「……はい、もちろん分かっています」

​ソニヤはそう言って、目尻に涙を浮かべた。

​この子は、そんな厳しい掟を知っていながら、両親を殺した兎人族を探そうとしていたのか?

重い罰を受けると分かっているのに、なぜ……。