「でも……一度だけ」
たった一度でいい。少しだけでもいいから、僕が生まれた場所をこの目でもう一度見たかった。
この森で過ごした日々は、確かに辛く、苦しいことばかりだった。
だがそれ以上に、母上と共に生きていたあの頃の僕は、心から幸せだった。その記憶を忘れることなど、できるはずがない。
「四十年も経って、僕だって成長している。もう、大丈夫だ」
そう自分に言い聞かせ、覚悟を決めた僕は、真夜中の森の闇へと足を踏み入れた。
四十年ぶりに足を踏み入れた真夜中の森は、相変わらず静寂に包まれていた。
月明かりが差し込むこともなく、永遠の夜が目の前に広がっている。
だが、そんな変わらないはずの森に、僕は何かしらの違和感を感じていた。
「……なんだ、この気配は?」
この森には三種族以外にも、野生の動物が数多く生息していたはずだ。
しかし、今は動物の気配が全く感じられない。すぐそばにある木々にも、木の実や果実すら実っていない。
まさか、縄張り争いの戦争が、ここにも影響しているのだろうか?
「四十年前までは、縄張り争いなんてなかったのに……いったい何がきっかけで?」
あの頃は、それぞれの種族が、女神エアから与えられた領地で、満足に暮らしていた。
縄張りを争って戦争を仕掛けることもなく、互いに一定の距離を保ちながら交流していたはずだ。
狼人族と兎人族だって、仲良くやっていた。
僕の記憶にも、食料交換で兎人族たちがよく村に来ていた光景が鮮明に残っている。
それなのに、いったい何がきっかけで、こんな戦争が起きてしまったのだろうか。
たった一度でいい。少しだけでもいいから、僕が生まれた場所をこの目でもう一度見たかった。
この森で過ごした日々は、確かに辛く、苦しいことばかりだった。
だがそれ以上に、母上と共に生きていたあの頃の僕は、心から幸せだった。その記憶を忘れることなど、できるはずがない。
「四十年も経って、僕だって成長している。もう、大丈夫だ」
そう自分に言い聞かせ、覚悟を決めた僕は、真夜中の森の闇へと足を踏み入れた。
四十年ぶりに足を踏み入れた真夜中の森は、相変わらず静寂に包まれていた。
月明かりが差し込むこともなく、永遠の夜が目の前に広がっている。
だが、そんな変わらないはずの森に、僕は何かしらの違和感を感じていた。
「……なんだ、この気配は?」
この森には三種族以外にも、野生の動物が数多く生息していたはずだ。
しかし、今は動物の気配が全く感じられない。すぐそばにある木々にも、木の実や果実すら実っていない。
まさか、縄張り争いの戦争が、ここにも影響しているのだろうか?
「四十年前までは、縄張り争いなんてなかったのに……いったい何がきっかけで?」
あの頃は、それぞれの種族が、女神エアから与えられた領地で、満足に暮らしていた。
縄張りを争って戦争を仕掛けることもなく、互いに一定の距離を保ちながら交流していたはずだ。
狼人族と兎人族だって、仲良くやっていた。
僕の記憶にも、食料交換で兎人族たちがよく村に来ていた光景が鮮明に残っている。
それなのに、いったい何がきっかけで、こんな戦争が起きてしまったのだろうか。


