「安心しろ!ソフィアちゃんの秘密は、この俺が絶対に守ってみせる!」

​ロキはそう言って、自信満々に胸を張った。

​俺はカレンと顔を見合わせ、全く同じタイミングでため息をつく。「いや、お前が一番秘密を漏らしそうで怖いんだけど」とは言わず、ただただ呆れる。

おそらくカレンも同じことを思っているはずだが、あえて口にしないあたり、俺以上に呆れているのかもしれない。

​だが、正直なところ、この二人の言う通り、俺一人ではソフィアを守りきれる自信はなかった。

俺なんかよりも、二人は戦闘経験が豊富だし、魔力だって桁違いに高い。

「業火の魔道士」「氷結の魔道士」という称号を与えられた二人だ。

一緒に行ってくれるだけで、これほど心強いことはない。

それにカレンは魔剣サファイアを持っている。魔剣が一本そばにあるだけでも、敵への抑止力としては十分だろう。

きっとサファイアには、魔法協会ですら知らない秘められた力が眠っているはずだ。

​「ちょっと、遅いんだけど」

​前方から聞こえてきた声に、俺たち三人は揃って前を向いた。

そこには、不機嫌そうに腕を組み、仁王立ちするソフィアの姿があった。

​まずい、と思った俺は、左手首の腕時計で時間を確認する。

ソフィアに伝えた集合時間から、すでに三十分が経過していた。

それを見た俺は、苦笑しながら両手を合わせ、頭を下げた。

​「ごめん! 遅くなった」

​「三十分の遅刻よ! いったい何をしていたのよ!」

​その問いに、俺は左右にいる二人に視線を送り、「これで察してくれ」と言わんばかりに苦笑いを浮かべた。

​「ソフィア、私はあなたが心配だからついて行きます。アレスの右隣にいるナルシスト馬鹿と違って、必ず守ってみせるから」

​「おい……その【ナルシスト馬鹿】って、もしかして俺のことか?」

​ロキはこめかみをぴくつかせながら、カレンに確認を求める。

だが、カレンはロキの問いかけを無視し、俺たちの横を通り過ぎて、ソフィアのもとへ先に歩いていく。

​「おい!無視かよ!」

​「ええ、うるさい虫(・・・・・)だけにね」

​「ぐはっ!」

​その言葉が鋭い矢となり、ロキの体に突き刺さった。

試合終了のゴングが鳴り響き、ロキの体からは魂が抜け、今にも夜空へ飛び立とうとしていた。