「もしソフィアに手を出したら、サファイアで凍らせて凍死させてあげるから」

​カレンは鋭い眼差しで、アレス以上の迫力でロキを脅した。

さすがのロキも、二方向から脅しをかけられたことで、何も言い返せずに何度も頷いている。

​「ねえ、ソフィアの『絶対零度の女』って呼び名、あなたじゃなくてカレンにこそぴったりじゃない?」

​テトの言葉に、私は「うん……そうだね」と頷く。

カレンが氷結の魔道士と呼ばれるだけのことはある。

ロキを睨んだだけなのに、ここにいる私にまで冷たいものが背筋を走った。

本当に体が凍ったような錯覚に陥り、夏の夜だというのに、このあたりの気温が一気に下がった気がする。

ある意味、カレンは【人造冷凍庫】だ。

​「まあ、結局二人じゃなくて、四人になったみたいね」

​テトはすべてお見通しだったのか、にこにこと笑みを浮かべて私を見つめている。

もしかして、テトが二人を呼んだのでは?

そんな疑念を抱きながらテトを横目で見た後、三人の姿を瞳に映し、私は小さく息を吐いた。

​☆ ☆ ☆

​夜の九時頃――

​俺は、待ち合わせ場所である学校へ向かうため、母さんを起こさないように書き置きだけ残し、ムニンと一緒にこっそりと家を出た。

​そして、すぐさま二人に捕まった。

まさかロキとカレンに待ち伏せされているとは、想像もしていなかった。

二人には仕事の話をして、護衛役として同行をお願いした。

​でもまさか……家の前で待っているとは……。

​「それに、いざとなったらアレスだけじゃソフィアを守れるか心配だし」

​鞘にサファイアを戻したカレンは、俺だけでは頼りないと言わんばかりにそう告げた。

その言葉に、俺は少しムッとして、目を細めてカレンの横顔を睨みつける。

​そして、俺たちの前でガタガタと震えているロキが、カレンの言葉に便乗して言葉を続けた。

​「そ、そうだぞ! もしソフィアちゃんの秘密がバレたらどうするんだ!」