俺はテトの言葉を考え込む。

温かくて心地よい夢……それが治癒魔法の一種なのだろうか? しかし、カレンから夢を通して体を治癒する魔法があるなんて話は聞いたことがない。

もし魔法じゃないとしたら、一体何だというんだ?呪術か? おまじないか?

それとも――

「まさか、魔人ソフィアが……?」

俺の口から出た【魔人ソフィア】という言葉に、テトは鋭く首を横に振った。

「それはありえないわね。あの子はソフィアのことを心から嫌っているし、自分から話しかけるなんてまずない」

「同じソフィアなのにか?」

「ええ。見た目は同じ存在でも、中身はまったくの別人。私たちが知っているソフィアが表の存在だとしたら、あの子は裏の存在。二人はまさに表裏一体なのよ」

テトの言葉に納得する。同じソフィアでも、感情、思考、力、能力がそれぞれ違う。裏のソフィアは人を殺すことをなんとも思わないが、俺たちの知っているソフィアは違う。

彼女は人を傷つけることを恐れ、人を殺そうなんて考えもしない。

「一体どんな夢だったんだ?」

俺は焦る気持ちを抑えきれずに問う。

「それは本人に直接聞くしかないわね」

そう言いながら、テトは俺の肩の上で毛づくろいを始めた。

俺はそんなテトを横目で見ながら、軽く顔を伏せる。

「……なぁ、テト」

ずっと胸の奥に引っかかっていた疑問を、俺は口にした。

「もし、ソフィアが魔人族の生き残りだと俺たち以外の誰かが知ったら、どうなる?」

テトは毛づくろいを止め、鋭い目でじっと俺を見つめた。そして、ぷいっと顔をそらすと、そのまま地面に飛び降りて、振り返った。

「間違いなく、ソフィアは狙われるわ。特に……【魔法協会】にね」

その単語を聞いて、俺は息をのむ。

「世界を滅ぼすほどの力、あの子の中にいる彼女は持っている。そんなことを知ったら、誰もがその力を手に入れたいと思うものよ」

「そう、だな……」

「それに、奴らは魔剣の行方も追っている。サファイアがカレンを選んだのは偶然かもしれないけど、あの連中がそう簡単に魔剣を手放すとは思えないのよ」

「何か狙いがあるってことか?」

俺の言葉に、テトは深く頷き、その場に座り直した。その瞳の奥には、強い警戒心が宿っている。