「体の方は平気だから、心配しなくても大丈夫だよ」

私の言葉に、カレンは「そう?なら良いけど」と小さく返した。彼女は私の体のことを知る数少ない友人の一人だ。

カレンの家族が経営する病院には、検査のために週に二度通っている。そのおかげで何度か病院で顔を合わせるうちに話すようになり、今ではミッシェルと同じくらい大切な友人になった。

「こ、こ、こんにちは、カレンさん!」

カレンの姿を見て体を固まらせていたミッシェルが、意を決して挨拶をする。

彼女にとって、【氷結の魔道士】または【氷の女神の加護を受けし少女】と称されるカレンが目の前にいることは、信じられないことなのだろう。

私もあの事件がなければ、彼女と関わることなどなかったはずだ。

「『さん』は要らないわ。そんなに緊張しないで、もっとリラックスしていいのよ?」

「は、はい!」

ミッシェルの様子に優しく微笑むと、カレンは私たちの横を通り過ぎ、食堂の奥へと進んでいく。

「それじゃあ、私は先に行くわね。早く行かないとケーキがなくなっちゃうから」

最後に振り返って嬉しそうに微笑むカレンに、周りにいた男子たちが次々と視線を送る。

「うわぁ……ほんとにカレンって綺麗だね」

「う、うん」

普段は凛として落ち着いた雰囲気だが、怒るととてつもなく怖い、ということは黙っておこう。

それにしても、朝昼晩とほとんどケーキしか食べていないのに、なぜ太らないのだろう?

「あ、アレス君たちも来たよ」

ミッシェルの声に、私は食堂の入口に目を向けた。
アレスが、隣にいる金髪の男子と一緒に食堂に入ってくるところだった。

「アレス君の隣にいるのって、カレンと一緒に入学してきた魔道士だよね?」

「うん、そうだよ」

アレスの隣で、眠そうに大きなあくびをしているのは、業火の魔道士ロキだ。