ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

ブラッドさんは、テトの問いに「そうだよ」と辛い表情で答えると、まるで自らの過去を抉り出すかのように、重々しい真実を語り始めた。

「星の涙はオフィーリアの命でもあった。だが、星の涙はエアの願いを叶えるためなら、平気な顔をして主を殺すんだ」

その一言一言が、ブラッドさん自身の魂を深く傷つけているのがわかった。

「オフィーリアの前の人たちだって、エアの願いを叶える為だけに、その命を差し出した。エアの末裔たちからしたら、『エアのために死ねるなら本望だ』と言うかもしれない。だが彼女、オフィーリアはそんなこと望んでいなかった」

「……先生」

俺は思わず、ブラッドさんを呼ぶしかなかった。彼はその女性の苦しみを、自分のことのように感じているようだった。

「当然、その星の涙を欲しがった奴らは世界中にたくさん居たさ。初めて信じた人ですら、結局は星の涙の魅力に囚われて、彼女から雫を奪おうと牙を剥く。そのせいで彼女は、人を信じることが出来なくなってしまった」

オフィーリアさんの旅が「過酷」だった理由が、今明確になった。孤独な旅路、迫り来る死、そして裏切り――想像を絶する重圧だ。

「でもそんな彼女は、誰よりも守護者たちが一刻も早く集まることを望んでいた。残り少ない自分の命を全て使ってでも、彼女は歩き続けたんだ」  

ブラッドさんの話を聞いていたレーツェルさんは、目に大粒の涙を浮かべ、静かに視線を下に下げた。かつての主の過酷な運命を、彼女もまた共に感じていたのだろう。そんなレーツェルさんを、隣のアルさんは優しく抱きしめた。

ブラッドさんは、絞り出すような声で続けた。

「オフィーリアは生きたいと強く願っていた。しかし、星の涙を内に秘めている限り、絶対に死ぬと言う運命から逃げる事は出来ないんだ。……それでも彼女は、生きたいと願った」

「……っ」

俺たちの胸にも、どうすることもできない無力感が広がった。

「でも……星の涙はエアの願いを叶えてこの世界から消滅した。そして結局彼女も死んでしまった……俺のせいで」

「えっ……?」  

ブラッドさんの左目から一瞬、光が完全に消えた。それは深すぎる悲しみと後悔が、彼の魂の奥底に横たわっていることを示していた。

しかし直ぐに彼の左目は光を取り戻すと、ブラッドさんは自嘲するような苦笑いを浮かべて言った。

「悪いな、こんな暗い話をしてさ」  

ブラッドさんは、何もなかったかのように椅子から立ち上がると、部屋の扉の方へと歩いていく。

「俺がどうして『エアの代行者』と名乗っているのか、それはオフィーリアが成し遂げられなかった願いを叶えるために、俺が勝手にそう名乗っているだけなんだ。特に深い意味なんてない」  

ブラッドさんは、そう言うと扉に手をかけ、振り返った。

「ま、俺が魔剣と守護者について知っているのはこれくらいだ。後の話しはアル、任せてもいいか?」

「それは構わないが、お前はどこに行くんだ?」